「安全」と「安心」
「安全」かも知れないが「安心」ではない、というのはここ数年、しばしば聞かれる言葉です。本来の意味は、「安全」は客観的な意味合い、「安心」は主観的な意味合いということですが、メディアに現れるような場合は、(意識しているかどうは別にして)別の意味が込められているようです。「安心」ではないとは、客観的には「安全」だが漠然と ...
先行着手と仮発注書
消費者契約法には、契約(の申込みや承諾)前に、その契約の義務の内容自体を実施したり、調査や物品調達といった契約締結を目指した活動を実施して損失補償を請求したり、という場合に、一定の条件の下でその契約を取り消すことができるという規定があります。事業者が消費者の困惑に乗じて契約を獲得することを禁じる趣旨の、消費者保護の規 ...
コンピュータ・プログラムと契約書
一見すると似て非なるものに思えますが、コンピュータ・プログラムと契約書には、かなりの共通点があります。いずれも「ロジックの塊」であり、それにより、片やコンピュータの動作を規律し、片や人の行動を規律します。実際、「CODE」の著者であるレッシグ教授は、サイバー空間においては「コードは法である」として、規制手段としての両 ...
大規模システム開発訴訟にみる「仕様凍結」
旭川医大×NTT東の訴訟(第一審:旭川地判平成28年3月29日、控訴審:札幌高判平成29年8月31日)は、スルガ銀行×日本IBMの訴訟に次ぐ、典型的な大規模システム開発訴訟でしたが、控訴審でのベンダ(NTT東)の逆転勝訴(約14億円の請求認容)という形で決着しました。主な争点はベンダのプロジェクトマネジメント義務とユ ...
「取引介入型サービス」のメリットとデメリット
「取引介入型サービス」というのは余り聞かないかも知れませんが、本来は二者間である取引に第三者が何らかのサービスをもって介入し、三者関係になるものを指します。もちろん、そのサービスに一定のメリットがあるからこそ、ビジネスとして成立するわけですが、デメリットにも注意しなければなりません。以下に、そのようなデメリットが生じ ...
報酬支払のタイミングと交渉力
請負契約でも準委任契約でも、報酬の支払は後払が原則です。もちろん、これは任意規定(法律上のデフォルト)ですから、契約によって前払あるいは中間金ありに変更することは可能です。前払であるか後払であるかは、資金繰りに大きな違いを生じさせますが、むしろそれより大きいのがいざという時に契約当事者の交渉力に与える影響です。 支払 ...
脆弱な情報システムの類型と対応
通常の業務系システムは、一定程度のバグや操作ミスがあることは避けられないという前提の下、一定の不都合な結果の発生は黙認している(せざるを得ない)状況にあると思われます。費用対効果を考えれば、これはやむを得ないとも言えるわけですが、以下に挙げるようなシステムについては、その費用対効果が破れるリスクが高く、再考を迫られま ...
法令の正式名称と略称
法令の正式名称(正しくは「題名」といいます)には、長いものが少なくありません。俗にいう「個人情報保護法」は「個人情報の保護に関する法律」、「プロバイダ責任制限法」は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」が、それぞれ正式名称です。比較的知られている法律で特に長い法令名を持つものと ...
サービス・レベル・アグリーメント(SLA)による品質の担保
サービス・レベル・アグリーメント(Service Level Agreement)とは、あるサービスを提供する事業者(ベンダ)とその利用者(ユーザ)の間で、サービス契約に付随して結ばれるサービスレベルに関する合意をいいます。ここでいうサービスレベルは、広くサービスの定義自体、範囲・内容、品質、サービス結果を含みますが ...
景品表示法の優良誤認で高額課徴金
先日、青汁を飲むだけで容易に痩身効果が得られるかの広告をしたとして、健康食品の販売会社が景品表示法違反で1億円超の課徴金納付を命じられるという事件がありました(平成30年10月31日消表対第1259号)。報道によれば、この金額は、食品販売業者に対する課徴金としては過去最高額ということです。処分を受けた販売会社は、自社 ...