IT法コラム

 「強い債務」と「弱い債権」という表題に、違和感を抱く人は多いかも知れません。債務は義務等の不利益だから弱いものであり、債権は権利や利益だから強いものであるはず。特に、悪質な債権者による強引な取り立てや、土足で踏み込んだ(実際にはそんなことはありませんが)執行官が家財一切に差押えの封印票を貼り付けていく、といったイメー ...

知的財産権

 所有権が「モノ」に対する権利であるのに対し、著作権は「情報」に対する似たような権利であると見られることがありますが、著作権の方はかなり人工的、政策的な権利です。所有権が全面的な支配権と言われるのに対し(これも美術品や廃棄物等を考えると程度問題ではありますが)、著作権では権利者の保護と公共財としての利用との間のバランス ...

IT法務

 紛争の当事者間で、一方が他方を一方的に押し込んでいれば、よほどの事情がない限りは相手方は折れるしかありません。これは実際には紛争と言えるようなものではなく、全体のパイは、「1+0=1」という状況です。もっとも、負け筋の相手方にも多少の理があれば、それなりに抵抗してくるかもしれません。落ち着きどころはこちらに有利な地点 ...

IT法務

 表題にある「劣化契約」は、造語です。モノだけでなく、企業や官僚や容姿までが劣化すると言われる時代ですから付けてみたわけですが、劣化契約の場合、これらとは一線を画する事情があります。それは、やむを得ず、あるいは結果的に劣化するのではなく、当事者が意図的に劣化させる、という事情です。つまり、当事者が(いかにも拙い思惑の下 ...

IT法コラム

 法律の改正が「差分」方式で行われていることは、一般には殆ど知られていない事実の一つでしょう。例えば、2020年4月から施行予定の新民法(債権法の部分の改正法)は既に国会で成立していますが、文字どおりの新「民法」が作られたわけではなく、「第○条第1項中『△△△△』を『□□□□』に改める。」といった「差分」だけが書かれた ...

IT法務

 契約書の契約条項を検討する場合、リスクヘッジについては考えるかも知れませんが、費用対効果については余り考えないかも知れません。しかし、実務で後者をなおざりにするのは、決して好ましいことではありません。 コストに引き合う場合  以下に例を挙げるのは、ライセンサーと代理店との代理店契約にある、勧誘行為の優先権に関する非常 ...

IT判例

 事案  レンタルサーバ・サービスを運営していたA社の担当者は、メールシステムの障害対策を行うため、同サービスで使用されていたサーバ群に対してメンテナンスを行うこととした。その際、メンテナンス用のプログラムに残っていた不要なコマンドを消し忘れていたが、そのコマンドが「対象外サーバ群のファイルを削除す ...

IT法務

 明治29年に制定された民法(のうち契約等に関わる債権法の部分)が、約120年ぶりの大改正となります。実際に施行されるのは2020年4月からとなりますが、早くから準備するに越したことはありません。また、施行後も相当の期間にわたり、解釈や運用の状況をウオッチしていく必要があります。  もっとも、改正議論の当初には3000 ...

IT判例

 事案  原告は、外国為替証拠金取引の取引用ソフトウェア上で動作するストラテジー(投資戦略)を自動実行する、本件プログラムを開発、販売していた。原告の元役員と取引関係にあったプログラマーである被告は、原告から本件プログラムの改修を依頼された際に開示されたソースコードを基に、取引結果を検証するための新 ...

IT法コラム

 鎌倉時代の禅僧である道元は、「不思議な力である神通には大神通と小神通がある。世間の人は火を吹いて見せるような小神通を尊ぶが、本当の大神通は、毎日ご飯を食べ、疲れれば寝るといった、人間が生きて暮らしているという当たり前のことにある」(中村元氏による)と言ったそうです。この考えからすれば、ITの世界には、「〇〇を使えば、 ...