揺れ動く「真意」と契約
ビジネスの土台には、契約があります。法的に言えば、契約とは「当事者の意思表示の合致」であり、その意思は真意でなければならないとして、その正当性が担保されています。ただ、それぞれの真意ではあっても、消費者契約に典型的にみられるように、公平とは言えない場合が出てきます。これは、立場の強弱や持っている情報量に違いがあるため ...
契約・取引の「一単位」と解除等の取扱い
「開発の中間成果と報酬支払」で言及した「システム開発の中間成果に独立した完成物としての価値があるか」ということをより一般化すると、契約ないし取引の単位の問題となります。つまり、契約の成立や履行、解除などは、まとまりのある「一単位」毎に考えるべきということです。 判例に見る「一単位」 このような「一単位」は、通常は契 ...
情報結合による個人情報化
ある企業Aの下に、ある個人の電子メールアドレスと病歴データのセットがあるとします。ここで、電子メールアドレスは「abc123@xyz.com」という、それ自体で個人を識別できるものではないとします(「taro-yamada@its-law.jp」というようなものであれば別ですが)。また、病歴データはプライバシー性が極 ...
情報システムと装置産業
「装置産業」とは、巨大な装置抜きでは事業そのものが始まらない、著しく資本集約的な産業のことです。鉄鋼や石油化学といった、重厚長大の第二次産業が典型とされていました。もう20年以上も前になりますが、あるノンバンクの役員が「ウチは装置産業だ」と喧伝していました。金融と装置産業、当時とすれば、この組み合わせは、ちょっと気の ...
情報システムの保守と障害切り分け
情報システムの保守は、パッケージ等を用いていればなおさら、そうでなくも、これを開発したベンダでなければ困難なのが通常です。そのため、開発委託契約とその後の保守契約は、切っても切れない関係になります。以下は、そうした関係の一例です。 保守契約の範囲として、しばしば「障害の(一次)切り分け」という作業項目が現れます。ユ ...
システム開発委託のモデル契約書
システム開発委託のモデル契約書で良く利用されているのは、経産省の研究会による「情報システム・モデル取引・契約書」で、伝統的な受託開発中心の第一版の後、中小企業でのパッケージ利用等を意識した追補版も出ています。超上流工程やマネジメントの重視、変更管理の徹底、重要事項説明書の導入など、システム開発に固有の論点に様々な知見 ...
情報システムの法的保護
プログラム、すなわち「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」に著作権法上の保護が及び得るのは、以前に述べたとおりです。では、情報システムを構成する他の要素には、どのような保護が予定されているのでしょうか。 まず、設計書やマニュアルのようなドキュメ ...
プログラムの不正利用と損害賠償額(東京地判平13.5.16)
事案 司法試験予備校である被告は、その校舎において、多数のコンピュータに正規のライセンスを得ていないパッケージ・プログラムがインストールされていたとして、その開発・販売元である原告(アドビ、マイクロソフト、アップル)からプログラムの使用差止、消去及び9500万円余(弁護士費用分を除く)の損害賠償 ...
プログラムの「使用」と著作権法
2010年1月に、コンピュータ関連の著作物の利用の円滑化を図るための著作権法の改正がなされました。その中に、「電子計算機において、著作物を当該著作物の複製物を用いて利用する場合...情報処理の過程において、当該情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で、当該電子計算機の記録媒体に記録することができる」 ...
プログラムのバグの法的扱い(東京地判平9.2.18)
事案 貨物運送業を営む原告は、輸出入・販売を行う商社である被告との間で、運送システム等の開発委託契約を締結した。開発そのものは、被告から別のシステムベンダ(訴訟で補助参加人となっている。)に再委託され、システムは原告の検収(どの程度の確認が行われたのかは不明であるが)も終えてテスト稼働に入ってい ...