IT判例

 東証対みずほ証券の判決で、結論への影響は必ずしも大きくありませんが、IT紛争の観点からは興味深い情報システム関係の論点を拾ってみました。 1.本稼働の判定について  判決では、直近の総合テストでの障害数が1回最大5件で、ゼロの日もあったことに基づいて本稼働日を決定したことについて、「上記の判断は、被告売買システムにお ...

IT法務

 IT紛争を抽象的に論じるとき、「ベンダ対ユーザ」という観点、すなわち「党派性」が色濃く出ます。同じ論点についての考え方一つをとってみても、ユーザの見方とベンダの見方では(類型的に)180度違います。  例えば、(望ましくない)仕様変更が生じてしまったとして、ベンダから見ればユーザの我儘であって契約範囲外のこと、ユーザ ...

IT判例

 事案   東証に取引参加していたみずほ証券は、新規上場されたジェイコム株につき、「61万円1株」で売り注文すべきところ、誤って「1円61万株」と入力し、制限価格を超えているとの警告画面も無視してそのまま発注した。その後、みずほ証券は取消注文を入力したが、東証の売買システムには一定の場合に取消注文が ...

IT法務

 システム開発委託契約の殆どは、法律上、請負契約になると解されています。これは、受託者であるベンダはシステムを完成させる義務を負い、委託者であるユーザはその完成に対して報酬を支払う、ということを意味します。つまり、報酬の点で言えば「後払い」となるのです。問題は、契約書でこれと異なる支払条件を規定した場合です。  例えば ...

IT法務

 存続条項というものがあります。例えば、「第25条 本契約の終了後においても、第○条、第○条、第○条の各規定は、なお有効なものとして存続する。」というようなものです。後払の支払義務や担保責任などが、契約期間が終了した途端に無効になってしまわないための条項です。  ところで、列挙する条項の中に、25条自体は要るでしょうか ...

IT判例

 事案   建築業者である原告Xは、インターネットプロバイダである被告Yとの間で、IP接続サービス契約に付随してレンタルサーバ契約を締結し、同契約により提供されたYのレンタルサーバ上に、宣伝用のホームページを開設した。同ホームページ用のファイルは、Yのサーバー上に保管されていたが、Yが同ファイルを別 ...

IT法務

 システム開発が頓挫する場合のユーザとベンダの紛争には、「屈曲点」とでも言うべきものがあります。ある段階までは本格的な紛争になりにくく、ある段階を超えると極めて熾烈な紛争になる、ということです。 「屈曲点」の前  本格的な紛争になりにくい方の理由は、容易に分かります。ひとたび開発に入ってしまうと、ユーザとベンダは互いの ...

システム開発

 情報システムは、その企業固有のカスタムメイドのものですから、開発をベンダに委託したとしても、ユーザは必要な情報提供などの協力義務を負います。のみならず、ユーザは、当該システム(あるいは開発プロジェクト)のオーナーとして、ベンダの業務について、厳しく目を光らせる必要があります。  もっとも、少なくとも法的には、ベンダが ...

システム開発

 通常のシステム開発委託契約は、ベンダが総合テストを終えると一旦「納品」し、これをユーザが運用テストや受入テストなどの形で「検査」をし、それに合格すると「検収」となり、その後「本稼働」を迎えるというものです。今回考えてみたいのは、この「検収」と「本稼働」の関係です。 二つの品質確認 - 検収と稼働判定  上に見たように ...

システム開発

 一時期、情報システムのTCO(Total Cost of Ownership)ということが喧伝されました。新規システムの導入時に、導入コストだけでなくその後のランニングコスト(運用・保守コスト)を考慮して初めて、正確な費用対効果が出せる、というものです。恐らく、このTCOの考え方は、改めて「TCO」などと言うまでもな ...