ITプロジェクトの「ハッブル的後退」
宇宙の膨張に伴い遠方の銀河が遠ざっていく速度はその銀河までの距離に比例する、という法則をハッブルの法則といいます。銀河は速度を増していき、やがて光速を超え、事象の地平線の彼方へと消え去ります。これになぞらえ、原子力開発の世界では、時間が経つにつれ稼動時期がむしろ遠ざかっていく現象のことを、「ハッブル的後退」などと呼ぶことがあるそうです。
これは、「後1か月だったはずが、1か月経つと後2か月になっている」という、ITプロジェクトでも良くある現象です。もっとも、ITプロジェクトでは、スケジュールの遅れが二重三重の納期の遅れを引き起こす、という本格的なハッブル的後退の前に、特異な動きを示すことがあります。すなわち...どう考えても間に合わないにも関わらず、納期は動かしたくないので、後続作業のスケジュールを極限まで圧縮し(ビッグ・クランチ)、納期の間際になっていきなり1年延長、2年延長と暴発する(ビッグ・バン)、というものです。
最初にビッグ・クランチが来るのは、必ずしも納期必達を重んずるベンダの職業倫理の賜物というわけではなく、納期延長により追加コストの歯止めがなくなるのを恐れるためです。逆に、突貫のやっつけ仕事を恐れるユーザは、納期を延長してやり直せと言ったりします。債務者が納期に向かって突進し、債権者がそれを阻止しようとするのですから、いかにも異様な話です。
ハッブル的後退の兆候が見えたら、要注意です。それをビッグ・クランチ(最初はスモール・クランチですが)で吸収しようとする動きが出てきたら、プロジェクトの崩壊は始まっています。
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