ユーザ責任とプロジェクトの成否
情報システムは、その企業固有のカスタムメイドのものですから、開発をベンダに委託したとしても、ユーザは必要な情報提供などの協力義務を負います。のみならず、ユーザは、当該システム(あるいは開発プロジェクト)のオーナーとして、ベンダの業務について、厳しく目を光らせる必要があります。
もっとも、少なくとも法的には、ベンダがまずいプロジェクト遂行をしている場合に、ユーザにこれを是正する義務があるわけではありません。ベンダ自身、システム開発の専門家として、より重いプロジェクトマネジメント義務を負っているからです。この義務は、逆に開発経験のないユーザが協力義務を怠っているような場合に、適宜これを指導してシステム完成への障害を取り除くことまで含むものと考えられています。
しかし、これは、実際にプロジェクトが失敗してしまった場合の事後的な責任配分の問題だと認識すべきです。プロジェクト遂行中に、ユーザが主体的な立場を失うと、開発に失敗した後で「損害賠償」は取れるかもしれませんが、開発に成功して「望むシステム」を手に入れることはできません。裁判で取れる損害賠償と、望むシステムを運用して得られる利益は、下手をすれば一桁違います。損害が莫大であるばかりでなく、事後処理を含めて数年から十年近くが費やされ、事業展開自体に深刻な影響が及んだ事例も稀ではありません。
ひとたびシステム開発を決断したなら、相当の経営資源を投入する覚悟がなければならないはずであるのに、安易に考えている例があまりにも多いことに、驚かされます。
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