「不定」を鎮めるプロジェクト計画

IT法コラム

 人間には、「不定」であることに耐えられない、という性質があるのだそうです。そのためなのか、極論すれば、ゼロかマイナス100か分からない状態より、マイナス100と決まっている方がまだマシ、などということが起こります。不合理と言えば不合理ですが、あれこれと思い悩まずに済むという心理的メリットだけでなく、マイナス100ではあれ、これを前提にした確定的な対策に突き進んでいけるという実質的なメリットもあります。

 法の世界で良く問題になるのは、刑事事件での逮捕・勾留です。法定の日数というものはありますが、延長に延長を重ねて「不定」ということになりがちです。その心理効果が被疑者・被告人の抑圧につながります。やってもいない犯罪が「自白」され、冤罪が生まれるのも、こうした背景があります。民事事件でも、企業であればともかく個人の場合は、交渉や訴訟の間に耐えなければならない不安は相当なものがあります。
 ITの世界では、完成の見込みがなくなりながらもいつ終わるとも知れない「頓挫-ing」の開発プロジェクトが筆頭でしょう。おそらくは何の意味もない、一生懸命に取り組んでいる外観を保つためだけの作業が続き、メンバーの士気は、それこそマイナス100以下です。「今より倍きつくても、あと3か月で確実に終わる」のなら、そちらを選ぶ人も多そうです。
 そうした状況からどうしても抜けられない場合は、「こうならこう」、「ああならああ」と、できるだけ具体的に決めておくのが、一つの方法です。できるだけ具体的に、というところがポイントで、疑似ではあれ「不定」ではなくなって、これから突き進むべき確定的な対策があらかじめ用意されている、というところがプラスになるというわけです。良く出来た行動計画や行程表は、そうしたところに配慮が行き届いているようです。